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@kanibeam_jp

自転車メッセンジャーやってます

ドラマ感想「山田孝之の東京都北区赤羽」

amazonプライムビデオで見つけた。

「山田孝之の東京都北区赤羽」を見ていてジョニーさんというおじさんに「うわっ」と思った。

「うわっ」と思ったんだけど、前は結構蒲田とかの飲み屋で熱い話をしてくれるおじさんは結構好きだった。

実際、清野とおるは蒲田に赤羽に通じるシンパシーみたいなものを感じたようだ。

cakes.mu

でも最近、全然そういうのにピンとこない。

確かに説教してくれる人とかって大事なんだけど、酔って説教してくるオッサンはたいがいロクでもないことに気付いてしまった。

結局のところ、酔って説教するオッサンは普段の自分が抱えている鬱憤を言い返せなさそうな若者にぶつけているだけなのだ。

場を壊したくない若者は黙るか、あるいは逆ギレしてブン殴るぐらいしかできないのだからやめて欲しい。楽しく飲みたいだけなのだ。

どうしても伝えたい事があるならシラフでやれ。言葉の選び方だってある。昨今の「ストレートに伝えられるのっていいよね」っていうのは大反対だ。

人を叱るときは相手を傷つけないようにとか、相手の役に立つようにとかいろいろ考えないと絶対にダメだと思う。ただド直球を投げればいいのならマネジメントなんて職務は存在しない。

あと、ワニダさんっていうフィリピンパブのママも個人的にはダメだ…。

ああしないと自分の店を守れないのかなとも思うんだけど、客を引っ叩いたり失礼なことバンバン言いまくったりしてくるんでイライラする。

何でお前に金払わなきゃいけねーんだって気になる。


でもまあ、自分の身近な町に近いものを感じたので感想。

今、最終話を見ている。

今までのアレやコレを入れ子構造にしたような話だな。

村から「お前には鬼退治ぐらいしか能がないんだから鬼退治に行け」と言われた桃太郎は、犬猿雉に出会って彼らが暮らす村で交流を図るが…

犬(ジョニーさん)に「お前にはやるべきことがあるんだから早くこの村から出て行け!」と言われて鬼退治に行く。

鬼ヶ島に着くも、鬼とは自分自身の姿だった。犬猿雉の声援を受けた桃太郎は己自身たる鬼を斬って終わり。

このドラマ(12話)をおおまかに解説するとこんな感じだ。

俳優として「役と自分を切り離せなくなった」(自殺する役で死ななければならない気持ちになった)山田孝之は、清野とおるの「ウヒョッ!東京都北区赤羽」を見てあまりに伸び伸びと赤羽で生きる人たちを見て「俺も赤羽に住んでみよう」と思い、赤羽でミーハー的に原作再現をしながら赤羽に馴染んでいく。そして… といった感じ。

そこに出てくるのが俺の嫌いなタイプの酔っ払うと説教してくるタイプのオッサンことジョニーさんだ。

ジョニーさんが具体的に山田孝之にキレたのは2回。1回めは2話、山田孝之が清野とおるを通じて赤羽に住む宣言をして飲み会の場で挨拶をした時。

「『赤羽に住んでみよう』って何なんだよ、別にそんなことしなくてもみんな普通に赤羽に住んでんの。わざわざ挑戦することでもないんだよ」

次は9話、山田孝之が赤羽にだいぶ馴染んできた頃。凧揚げで盛り上がったあと「これみんなでやりましょうよ!」ってはしゃいでる時。

「凧揚げって何だよ。こんなことチャラチャラやるために赤羽来たのかよ?みんなお前の凧揚げに付き合うほど暇じゃないの」

これは、つまり12話の「お前にはやるべきことがある」に繋がっているんだろう。

俳優業を10年ぐらい休業するかぐらいに思い詰めていた山田に「それでもお前は俳優だ」と言いたかったんだと思う。

ただ、山田の人生を決めるのは山田だ。ジョニーさんみたいな赤の他人にあーだこーだ言われる筋合いはない。

その点、7話(だったっけ)に大根監督が清野とおるに「ナニしてくれちゃってんのうちの山田に…」と言ったのはスマートだ。

確かに7話ぐらいの山田は目がイッちゃってたし、それに対して「あれだけの才能溢れる俳優を変な街に染めるな」と裏で言ってたというのはやり方としてはアリだろう。

実際に、大根監督は山田とステークホルダーの関係にあるから山田がどうにかなると彼にも不都合があるのだ。「山田をどうにかして俺に損失を与えるな」というメッセージは正しいように思う。

ジョニーさんの立場であれば「それでも俺は俳優をやっている山田が好きだ」という言い方をすべきだった。

だいたい酔って説教するなんて、みんなでワイワイやってるところに冷や水ぶっかけるような真似をいい年してすべきじゃない。まずは説教する側がそれを学んで欲しいと思う。

とはいえ、この番組自体も確かにどうかなと思う部分はある。

途中から山下監督も感化された(大根監督は『伝染る』と表現していた)部分もあったようで、大根監督にいろいろ言われた後山田と「まああの人は赤羽にたかが2,3回しか来てないから」とずっと語り合ってて笑った。

ただあの企画を誰が最初に持ち込んだかは分からないけど最初は「赤羽に住んでるヤツみんなヤベーよ(笑)山田どうなっちゃうのかな(笑)」というようなノリであったことは間違いないし、それに対して「赤羽に住んでるヤツだってわざわざ住むようなもんじゃなくて普通にやってんの」と言いたくなるのも分かる。

これが蒲田の特集であれば、「蒲田にはこんなに美味しい店がある」「こんなに盛り上がってるバー/パブがある」というのは分かるが「蒲田に住んでる○○さんはああでこうで、原作通りヤバイ人だった(笑)クレイジー(笑)」みたいな扱いをされて気持ち良い訳がない。

蒲田だって餃子がうまくて、酔うと説教垂れるクソジジイがいて、テンション高めのフィリピンパブのママがいるただの街だ。何かを探しに来られても困る。

まーこの辺は地方移住を目論むサラリーマンに「こんなとこまで何しに来たんだよ?」と言いたくなるような気持ちと同じだろう。ベストな答えは「なんか良かったんですよね!落ち着いてて僕は好きです!」というところだと思う。山田はなまじ漫画を読んでたから赤羽をおそらく「カオスな街で、ここに来れば何かが見つかる」と思い込んでいた。

勿論実際にはなにもないし、山田も桃太郎の劇中で「結局鬼とは己自身のことだった。己を斬る」ということでそこの気づきを表現した。

地方居住関係はこういうことが多いんだろう。つまり自分で出来なかったこと、弱ったことを周りの環境のせいにして「新天地に行けば全部解決する」と勝手に無駄に期待した挙句、いざ引っ越してきてガッカリするのと一緒だ。

普通は「この辺って面白いかな?」と思ったら何回か旅行してみるとかすべきだろう。

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まあ結局のところ俳優業を少しお休みして視野を広げてちょっとゆっくりしたら思いつめてたけど回復しましたというだけのことだと思う。

それは実際のところ赤羽は切っ掛けでしか無くて、蒲田だってできただろうしなんだったらもっと地方で昆虫追っかけてたほうがもっと早く結論が出てたかも知れない。もしかしたら海外移住の方がよかったかもねという話でもある。

じゃあそれを人を喰ったような表現をしながら映像化して、その喰われた側の人間の尊厳や人権はどうなるんだ?というのはもっともな話。

勿論テレビ番組だから、一般人は映されたら内容はどうあれ嬉しいということもあるけど、じゃあ映す側は調子こいて何でもやって良いのか?というとそれは違う。

だって、直接ジョニーさんに赤羽で殴りかかってくる人がいるかどうかは分からないけど僕はこのドラマを通じて名前も顔も知らないおじさんとママを勝手に嫌いになっているのだ。そんなこと、嫌われる側にとっちゃたまったもんじゃないだろう。勝手に撮られて、勝手に編集されて、勝手におもしろおかしいオッサン扱いされて勝手に期待度を高められても嫌だし、勝手に嫌われるのも嫌だ。

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ズートピアでも記者会見で肉食動物に対するイメージが固定化されてしまうという場面があったけど、メディアというのはそれだけの力を持っているのだから気を使いすぎるくらい気を使って然るべきだと思った。

とりとめもない文章になったので簡潔にまとめると、

・酔っ払って説教するのはやめろ

・地方移住はあくまで切っ掛けの話であって、結局は自分自身の認識の問題だから移住すること自体に多大な期待をするな

・メディアは何かを特集する時にはちゃんと本人の気持ちに配慮しろ

という3点だ。こんなのごく当たり前だよね。でもまー色々なステークホルダーの関係でがんじがらめになった現代社会ではこのクソシンプルな結論が出ないというか出せないんだと思うんだけど。